2019年5月号
『まだまだ、こんなものじゃない。』
ー 県総体 一回戦〜準決勝 ー
5月下旬の連続真夏日は観測史上、類を見ないそうだ。最終盤、暑い夏が一足飛びにやってきたような今月の奮闘を振り返る。
大型連休期間、5月1日のPNFCトレを挟んで、先月後半の高校リーグvsカピタニオに続いて3日にvs豊川。随所に良い戦い振りを示すもバーとポストに阻まれること3回だったか4回だったか。逆に流れは豊川へ。0−2で敗北。失点の改善は急務。だがこれも良い学びになればいい。
10連休の後半には少しオフを入れて、11日から県総体の決勝トーナメントが始まった。初戦の相手は市邨と春日井商業と新勢力の菊華、という3チーム合同と対戦。合同と侮るなかれ。しっかりと予選リーグを勝ち残って進出してきたのだ。対戦相手に最大限のリスペクトを払ってメンバーを送り出す。するとこの試合はアンガクのアウトサイドが圧巻の出来。私が言うのもなんだが流れるようなパスワークとポジショニングで相手を翻弄することに成功。トレーニングの成果が出たとも言える。前半8得点(ホノカ4、リナ、ユイ、アズミ、レン)、後半2得点(ヒロナ、ナナコ)。合計10-0で一回戦を突破した。
試合後、市邨の林先生と談笑。仲良くさせてもらうようになってから時間は長く、サッカーでもサッカー以外でも腹を割って何でも話す仲である。自然と試合内容(試合結果でないところがミソ)に話題は移る。林先生のほうから今日の目標はパスを5本連続でつなぐことだった、とカミングアウト。アンガクの掲げたゲームテーマは、まさしくそれに相反するものであり、そりゃ必然的に質の高いものになるわな、と笑い合う。スコアに反して内容としては、質的な意味で間延びのない試合だったことをここに明記しておく。
翌12日にはU15選手権視察として名古屋学院大に出向いた。総体と日程がかぶるため年々行きにくくなっているのが正直なところだが、先月末の刈谷港町グランドに引き続き今年度2回目。この日は4チームを観ることができ、これまた学びと発見の多い1日となった。
愛知に残ってサッカーを続ける経験者の数は以前に比べると飛躍的に増えている。反面、やはり県外での寮生活に成長の入り口を見出そうと考える向きも変わらず根強く残っている。3年間が長いか短いかと言う概念的な話はともかく、日々の成長を家族で見続ける、一見すると回り道のようだが、日常の些細な出来事にも寄り添う家族の存在というのが多感な時期には大切だと私は信じて疑わない。ふと周りを見ると県内高校女子サッカーの質的向上は目を見張るばかりだ。各チームに経験者が増え、それに負けじと指導者たちも研鑽に事欠かない。クラブや大学とは独立し、高校だけで3部制リーグを数年にわたり実施できているのも全国の都道府県で数えるほど。なおかつ高校のトップは全国で明白な結果を残している。こんな恵まれた愛知県の環境を再認識してもらえたらいいな、と独り言を書きながら思う。
閑話休題。
18日に準々決勝、松蔭高校戦。予選リーグを首位突破してきたチームには間違いなく勢いがある。総体での敗退が即引退につながるからか、気持ちの強さがそこかしこから漂ってくる。
キックオフ直後から支配率を高める試合運びに成功。ただ、フィニッシュがうまくハマらなかった。試合前に部員に予言した通り、確実に手こずる流れになってしまった。前半を無得点で終え、後半に入ってからも
ゴールネットを揺らせない。何より松蔭の魂こもったボール際の気持ちが素晴らしかった。長年に渡る名門校の息遣い、のようなものかもしれない。対するアンガクも、変わらず支配し続けるも若干のアイデア不足に陥ってしまった。延長もやむなし、かな…と思った後半30分。アウトサイドでやっと気の利いた展開。リナの配球に反応したのはナナコ。守備職人が直前のセットプレーの流れでペナルティーエリアに残っていたのだ。見事な反転から思いの込もったフィニッシュ。粘りに粘った松蔭のおかげで、またひとつチーム力を引き出してもらえたとも思う。
25日、準決勝で聖カピタニオと対戦。
創部以来、公式戦での対戦結果は勝利数ゼロ。カップ戦では一度だけ、2年前に夏の決勝で引き分けた。
初めての試合は確か0-14だったと思う。いや、もっと酷かったかもしれない。そのころからすでに全国レベルの舞台で戦っていたカピタの〝練習相手になりたい〟という目標が出来たのはきっとその試合がきっかけだ。
予選リーグで同じ組に入らなくなったのはウチが少し勝てるようになってベスト8のシードを手に入れるようになってから。でもその分、決勝トーナメントで随分しごかれた。
カピタと戦うことでチームは成長してきた。カピタと戦うためには勝ち進むしかない。成長のエネルギーはいつもロッソネロ(赤×黒)だ。いつの間にか県決勝でカピタの対戦相手になれるまで成長できた。
戦っては負け、また立ち上がっては打ちのめされ。それでもいつも「今年こそ」「今回こそ」の強い決意。諦めなかった歴代すべての部員のおかげで今がある、と本当に思う。
試合後に映像を見返したある部員のノートには1点目のゴールはただのラッキーゴールではないとはっきり書いてあった。ユイの見事なフリーキックの落下点近くでホノカのフリーランニングが生きたのだと。明確な意図のもと、複数が連動して先制ゴールを生み出した。前半12分。
前半16分。アタッキングサードで見事なアプローチが効いた。会場がどよめいたシュートの球筋にも私に驚きはない。トレーニングで出来ていたことが試合で表現できた。そのことがただただ嬉しいだけ。2度目の歓喜は再びユイ。
カピタニオの猛攻を食らうもなんとか凌ぎきり、2-0で前半終了。控え室に一旦戻る部員たちが知っているのは、準々決で素晴らしい出来だった同朋を、それでも力づくでねじ伏せたカピタの底力。前半の修正点を明確にし、どう対峙するかポイントの確認。そして「歴史が変わる」のではなく「歴史を変える」というチーム全員の意識を再確認。
後半のカピタは獰猛だった。背中を見せたらその瞬間にやられる、だから絶対逃げずに戦う。そんな試合運び。だがそんな中、後半26分にとうとう押し込まれた。2-1。しかし約一ヶ月前のリーグにおける対戦時から予見はあった。大崩れしない予見。堪えるチーム力が身に付いてきた。不格好でも向き合って凌ぎ続ける力、というようなもの。
必死の攻防は両チームの体力を根こそぎ奪う。灼熱だから尚更だ。後半途中まで耐えた1年生に代わって入ったヒロナが中央突破。一度はGKにより見事に跳ね返されるも詰めたのはリナ。この時間帯にも関わらず見事な運動量で、チームを牽引するゴールを決めてくれた。この時すでにアディショナルタイム4分間の、2分が経過。
来週6月2日、県総体決勝。
もうひとつ、歴史を変えよう。