2018年5月
『短期的視野、経験値。』
ー 県総体準々決勝&準決勝 ー
5月19日、県総体準々決勝。
決勝トーナメントはレギュレーションにより1回戦シード扱い。つまり準々決勝が初戦。予選リーグとは異なるステージに、不安が先に立つ。3月上旬、半ば強引に新チームを始動させ、なんとか機能する組織にまで漕ぎ着けることはできたと自負している。唯一足りないのは真剣勝負での経験値。それが思っていた以上に大きくのし掛かってきた。無理もない、何せ1年生にとってはこれが初めての高体連大会なのだ。
前々日のトレーニング終わりには「緊張感を楽しもう。真剣勝負を楽しもう」と話した。頷くのは…3年生ばかりであった。きっと、彼女たちには言葉の真意を読み取る力がこれまでの時間と経験で身に付いているのだ。普段、私は楽しもうなどとは決して言わない。必死に取り組み続けることに対してのみ成長する美しさを感じるし、そのことが周囲にどれだけの好影響を与えるかも知っている。成長には工夫と挑戦が不可欠であり、真剣勝負を継続した先にこそ達成感や充足感がある。サッカーにおける楽しみとは、まさにそういうことなのだ。
前半立ち上がり早々、マッチアップの攻防が至るところで繰り広げられる。オープニングシュートは豊川だった。想定内とはいえ、やはり豊川は手強い。もちろんアンガクも受け身にならずに徹底抗戦。すると前半18分、抜け出したナツキからホノカにスルーパス。1年生FWが落ち着き払ってGKとの1対1を制しゴール。これがアンガクにとってこの試合1本目のシュートであった。1-0。勝たなくてはいけないという重苦しさから少しだけ解放された瞬間だったように思う。その後も激しい攻守の中、スコアは動かない。前半を終えて1-0。
後半はすぐに試合が動いた。3分、豊川が起死回生の同点ゴール。1-1。やはり一筋縄ではいかない相手だ。しかしアンガクも強くなっている。失点の直後、ナツキが圧倒的なドリブルで切り崩し、素晴らしいセ
ンタリング。ゴール前に詰めたのは1年生アタッカーのリナ。蹴り込んだ力強さにはすでに主力の自負が窺える。これで2-1。さらに13分、ゴールまでまだ25m以上はあろうかという距離で魅せてくれたのは再びナツキ。この視野の広さは他と少し次元が違うように思う。頼もしい主将のひと蹴りで3-1。最終盤には自陣混戦から気持ちのこもったフィニッシュを被弾したが、これは今後もライバル関係は続くよと好敵手豊川からの強烈なメッセージだと受け止めた。直後にホイッスル。結果、3-2で勝利。4強に名乗りを上げた。
とにかく難敵が続く。5月26日、準決勝は愛知啓成と対戦。直近の公式戦、つまり昨年度の新人戦準決勝と同じカード。あの時は4-3(前半2-0)で勝利したものの、文字通り死闘だった。あの試合から約4ヶ月。絶対に譲れない普遍性を追求し、そのなかでさらに成長しようとどれだけ貪欲になれたのか。チームが進化した部分を表現する大事な一戦。
啓成らしさに手を焼いた立ち上がり。いくつかのセットプレーから被シュートもあったがピッチ上ではそれぞれの場所と役割から状況を観る視点を持つことができていたようにも思う。少し経験値が上がってきたか。たかが1試合、されど1試合。
前半9分、ペネトレイトに成功しGKと1対1の場面。一度は跳ね返されたもののパワフルに蹴り込んだのはユイ。32分にはナツキの技術にホノカが最高の反応を示した。取材に訪れていたフリーライターの大森さん曰く「イブラヒモビッチみたいにアクロバティックなゴール」で追加点に成功。これで2-0。
迎えた後半、押し気味だった25分にユイがこの日2点目となる狙い澄ましたかのようなミドル。準々決勝で得点機になかなか絡めなかったユイが溜飲を下げるような活躍を魅せ、3-0。その後も追加点を目指しつつ絶対に無失点で切り抜けたいという気持ちが伝わる好プレーが続出。力を出し惜しみしない選手が増えてきたのは好材料だ。さらには最終盤ではあったが交代カードを切ることでピッチに活力を与えてくれる仲間の存在も再確認できた。
これで決勝進出が決まった。対戦は聖カピタニオ女子。
魂を揺さぶる試合をしよう。