2017年5月。
『息苦しさと、歓喜。』
ー県総体 予選L、準々決勝、準決勝ー
苦汁を舐めた新人戦から約3ヶ月。一昨日5月27日、県総体の決勝進出を決めた。対戦相手の素晴らしさを認め、その上で魂を揺さぶるような試合内容を展開出来たと思う。部員の成長と覚悟が見えた。そして、ようやく挑戦権を手に入れた。
ここまでの3試合を振り返ろう。
5/5、予選リーグ第2節。清林館とは公式戦初顔合わせ、のはず。これから頑張っていこうと決意みなぎるフレッシュなチーム。アンガクは前節、菊里戦で圧倒しつつも2ゴールに終わった反省からゴールに向かう意識付けをトレーニングで徹底。それが功を奏したのか前半から猛攻を仕掛けることに成功。前半6分のレオナを皮切りに8分リカ、17分ナツキ。21分には交代出場のミサトが1stプレーでゴール。そして23分と28分にはレオナが前半だけでハットトリックとなる2得点を追加。6ゴールで前半を終えた。後半に入っても勢いは止まらず。交代カードを全て切るなか、13分にハナ、22分にはレオナ。そして終了3分前からナナカが2得点。結果、10-0で予選リーグ1位突破を決めた。
予選リーグの結果、5/7の一回戦がシードになり、決勝トーナメントは5/20準々決勝から。ここからは負けたら終わりのノックアウト方式となる。会場は人工芝にリニューアルした口論義運動公園。そういえば1年前の県総体決勝ではピッチ内で雑草の花が咲いていたっけ…(笑)。あの時とは全く異なるピッチで熱い戦いが再び始まる。一気に高くなった気温とゴムチップの多さがどう影響するか…。対するはスモールフィールドへのこだわりが顕著な椙山女学園。主軸の実力は誰もが認めるところである。予選リーグはすべて僅差をモノにし、一回戦では力ある至学館をこれまた1-0で退けてきた。おそらく実戦の中で粘り強さも身に付けたであろう、全く予断を許さない相手との一戦。
前半キックオフからプラン通りのサッカーを展開するアンガク。ほとんど全ての局面で隙を見せないプレーを展開し、それでも生じてしまうミスは互いの運動量でカバーした。この日の主役はナツキとナナカ。課せられたタスクを完全に理解し、表現し続けた。周囲もフレキシブルに連動し、チーム一体となって攻守両面において圧倒。オープニングゴールは前半5分にミサト。早い時間帯の先制点はチームにリラックスをもたらした。立て続けに7分、今度はナツキが決めた。この場面、アカネのアシストにも大きく沸いた。当然、椙山の素晴らしい球際の粘りに手を焼くシーンもあったが25分にリカ、30分にレオナが決め、計4得点で前半を折り返す。
ハーフタイムは体力の回復を目指しつつ改善点を互いに探す。こういったゲーム展開でもより良い内容を求める姿が心地よい。結論が見えにくかったリスク管理の確認だけはこちらからアドバイスを送った。チーム全体のタスクは残る35分をきっちり戦うこと。顔を上げてピッチに向かっていく。やはりこの日も交代カードを5枚切る展開。後半は11分にレオナ、そして33分にはナツキからタマへ最高のパスが送られた。大事な試合で自身のストロングポイントを表現できるとは…高校からサッカーを始めた部員が成長ぶりを見せつけてくれた。素晴らしいゴールで締めくくり、そのまま6-0でフィニッシュ。準決勝の切符を手に入れた。
5/27、準決勝の相手は愛知啓成。昨年度新人戦準決勝の記憶は未だ鮮明。定刻通りのキックオフはアンガクから。あの悔しさが残るせいか、あるいは気持ちがあまりにも高ぶっていたせいか、試合開始の動きは若干ぎこちなかった。ミドルキックが相手に引っかかったり、判断が一瞬遅れる場面も。ただ、程なくしてアグレッシブなプレーが出始める。後方からのダイナミックなクリアあたりがキッカケだったか…。そうなるともう大きな心配はいらない。
実は試合前に小さなアクシデントがあった。いつもの通りズンバに取り組もうとするメンバー。すると何故だかボリュームが上がらない。思いの外、急激に上がった気温のせいか…。スピーカーから音が出ているのは確認できるのだが…どうやら音量レベルに不都合が起きているらしい。誰が悪いわけでもない。機械が悪いのだ。しかし率先してリードしている者だからこそ責任を重く感じてしまう。結果、鳴り物の応援が響くピッチの脇で、全員が必死で耳を傾けながらズンバるアンガク。
試合直前。「スピーカーが具合が良くなかったのは残念だったね。でも今までで一番集中して音を聞こうとした姿勢は、もしかしたら試合で生きるんじゃないか?…仲間とのコミュニケーションも、それぐらい敏感になって互いに伝えられたら今までにないほどつながりあってプレーできると思うよ」。こじつけがましいが、でも本当にそうだと思う。
とにかく前半のビッグセーブが大きかった。今大会、ここまでほとんどシュートストップの機会が無かったGKイマミサが啓成の前に勇気をもって立ちはだかってくれた。あれが無かったら試合展開は苦しいものになっていたに違いない。そして当然、流れはアンガクへ。
スコアの動きを簡単に振り返る。前半22分、インターセプトしたレオナがつなぎ、ミサトが一閃。均衡を破る。その7分後にはレオナが歓喜の中心に。2-0。後半に入り6分、再びレオナ。9分にはナナカのCKにアミ、リカ、ミサトの動きが功を奏した。これで4-0。ただ、これで下を向くような愛知啓成ではない。31分には啓成にとってのストロングポイント、アンガクにとっては最も気をつけていた形からゴール前で混戦になり無念のオウンゴールを献上。このまま終わると嫌な印象が残りそうだなと思っていたが、35分にCKから見事なゴール。最後を締めたのは主将のリノ。ブザービートのようなタイミングで準決勝に終止符を打った。5-1。
今覚えば…以前は…もしかすると「決勝に進出するのは当たり前」と根拠なく考えていた節があったのかもしれない。絶対どこかに甘えがあった3ヶ月前。0-3というスコアでアンガクの力不足を残酷なまでに知らしめてくれたのが愛知啓成だった。今回、立ち上がるための息苦しさを経験したアンガク部員たちは…また成長できた。
ファイナルは聖カピタニオに挑戦する。
大会制覇まであとひとつ。全国出場まであとふたつ。