2016年7月。

『 再現性、引き出す言葉のタイミング、巨匠、ズンバ 』ー名古屋経済大学フェスティバルー

7月9日、10日。名古屋経済大学。
定期試験直後の週末、名経大のフェスティバルに参加させていただいた。参加校は大商学園(大阪)、聖和学園(宮城)、帝京長岡(新潟)、岡山湯郷BelleU-15、聖カピタニオ女子、そして安城学園。全国レベルしかも常に上位に入っても不思議でない学校ばかりに加えて岡山湯郷Belleは今年度のU-15全国切符を中国地区1位で獲得したチーム。そんな中に混ぜてもらったことに感謝するのみである。冷静になればなるほど身の程知らずを自覚してしまうので、こういう時にはあまり深く考えてはいけない。年齢と経験を重ねて学んだ知恵である(笑)。上質な時間と空間に身を任せ、最高の環境にどっぷり浸らせて頂いた。三壁さん本当にありがとね。
まずは試合結果から。
9日初戦、vs聖和学園。前半0-3、後半0-2の計0-5。
第2戦、vs帝京長岡。前半0-0、後半0-6の計0-6。
TM、vs岡山湯郷。0-3?。
10日第3戦(順決)TOPvs岡山湯郷-U15。前半1-1、後半2-0の計3-1。
TM、TOPvs大商学園C。0-1。
どの試合も出場した部員は当然ながら全力で挑み(初日は初心者1年生含め怪我人以外全員出場)、そのおかげで強豪相手に十分戦えた素晴らしいシーンが幾つもあったし、逆に失敗についても今後、個やチームの財産になるものばかりであった。
それにしても私はベンチでブツブツしゃべっている。35分ハーフでたぶん34分ぐらいしゃべっている。多田のお兄ちゃん曰く鳴り物レベルの大声ばかりがクローズアップされているが、何を隠そう小声も出せるのだ(笑)。そしてそれを常に隣で、時には頷きながら時にはメモを取りながら顧問の本当の独り言に付き合っているのがマネージャー兼副将のチーさんことちひろである。私1人では抜け落ちまくりのチーム運営をひたすらカバーしてくれる、私の相棒である(と本人が思っているかは全く知らないけど)。いつにも増して、この二日間はチーさんのメモ回数が多く頷き度が深かった、かもしれない(かもしれない、というのは試合中にボソボソしゃべっている時、私は殆どチーさんの方を見ないし見れない。視線はピッチあるいは呼んだ部員を見て話し込んでいる)。

今回のキーワードの1つ目は『再現性』。得点機を増やすためには偶発性の高いプレーに頼らず効果を意図的に発生させることが必要だ。ここ数試合の試合内容(試合結果ではない)を反省した上で、トレーニングで継続強調してきた。結果的に上手くいったプレーでも〝主体的〟にきっかけを作ることができていたかどうか。〝意図的な技術の発揮〟があったかどうか。二日間で特に攻め入ることができず悔しい思いをしたのは聖和戦の前半、帝京長岡戦の後半10分過ぎからの時間帯、TM湯郷との30分。起用したアンガク部員の力量と対戦相手の素晴らしい力量とのギャップが大きかったと言ってしまえばそれまでだが、逆に言えばそれ以外の時間では再現性のあるプレーを幾度か表現できた(攻守両面で)。そういえば本部席で背中越しに雑談の機会があった聖和の国井総監督。聖和の素晴らしいシーン(ボールの置き場所、突破のアイデア、シュートコース、その他)に賞賛の声が周囲から上がると少し誇らしそうに目を細めながら、少し高い声で「あーあれは再現できるんだよねぇー」と一言。期せずして耳にした同じ言葉は、発せられたものと違う意味合いで私に確信を与えてくれる。

2つ目は『引き出す言葉をどのタイミングで発するか』。本当に戦えるチームは足元の技術が高いだけでなく予測力も走力も体幹も相当強い。いつもと同じ、今までと同じテンポでプレーしているとアンガクは主力メンバーでさえ、たちまちボールロストするきっかけを作ってしまう。誤解してはいけない。個がミスをしたことが問題なのではなく、日頃そういう水準の練習しか出来ていないことが問題なのだ。そこで二日間私が要求したのは「ボールを動かす選択肢が複数あることを現状より早いタイミングで伝えあおう」というものであった。日頃も言ってはいるがなかなか実行できていないこと。厳しい対戦相手を前にして、それでも少しずつ変化が見られた初日。しかし二日目に気づいたのは〝一方からだけのコミュニケーションでは他方はリアクションになり、気付きと動きは常に一瞬遅れる〟ということだ。それを見逃してくれない対戦相手だったからこそ、当たり前のことに気付くことができた。本当に、心の底から、失敗が全て財産になると痛感。

例えばこういう話を(いや、もっと他の話しもしたと思うけれど)ずっとチーさんは隣で聞いている。ちらっと見ると引きつった愛想笑いを浮かべている時もある。きっと相当なストレスだ。かわいそうに(笑)。でも仕方がない、相棒なんだから(いや、だから本人はそう思ってない可能性が高いんだけど)。

部員は二日間、そんな時間を過ごしていたのだが、私は私で大きなミッション(ミッション!)があった。大商学園の竹内先生、聖和学園の国井先生に少し近づいて…願わくば遠征先としてお邪魔させてもらえる関係になることだった。なぜか暖房(暖房!)のスイッチが入った部屋でサッカー談議に花を咲かせる諸先生方。ちなみに暖房を指摘したのはやはりタダビッチであった。さすがだ。
しかし私も負けていられない。逆サイドにスペースを見つけ竹内先生とマッチアップを試みる。すぐに周囲をカピタ梶野、南山梅垣、市邨林に囲まれてしまった。四面楚歌。まずい。ただ、今にも泣きそうな(泣きそうな!)中野を見捨てるような竹内先生ではなかった。思慮深い表情と眼鏡の奥に光る目で〝いつでも来いよ〟と声をかけてくれた(はず)。大阪遠征、ゲット(いや、油断はできない)。そうこうしているうちにタイムアップの気配が。しまった、もう一つのミッション、国井先生とのお近づきが不発だ…。ひどく落ち込んだ中野は悔しさを紛らすように誰かが買ってきた極端に辛いワサビ味のスナック菓子を食べて、流れる涙がワサビのせいだとアピール。その時!国井先生とアイコンタクトに成功。次の瞬間、思わぬ一言。「…おーい、中野。お前、5キロ痩せろ」。…宮城遠征は少し先になりそうだ。

最後にもう1つ。
この二日間、ピッチのいたるところでボールを触らないW-UP(PNFC)を見た。これまで幾度も見たことはあったがここまで間近で、しかも3チームが同時に取り組んでいるのを見るのは初めての経験。正直、今までは〝これってどうなんだろう…〟と猜疑心の塊のような視線で見ていた自分だが、そこに端を発したとしか思えない圧倒的なパフォーマンスを体験すると、手をこまねいているのももったいない気がした。導入するには色々と高いハードルがあるが、部員全てが〝自身が経験したことのないパフォーマンスを獲得する〟ためには新しい試みも必要、かもしれない。