2013年2月

新人戦、開幕。

予選リーグC。第1戦、1月26日。会場は小坂井高校。対するは高校選手権県3位、総体予選県1位の椙山。
同会場で午前中にAリーグ実施後のCリーグ開幕。猛烈な風が吹き荒ぶグランドはセットプレーのボールが止まらないほど。午後からもっと風が強くなるよ、という話に苦笑いするしかない。そんな試合前、アップでもストレスを感じる中、懐かしい訪問者が。私が安城学園に来る前に指導していた高校(男子)の主将、愛称“よっちん”だ。どうやらこのサイトを見て来てくれたらしい。大事なゲームの前に不謹慎かもしれないが久しぶりの再会、昔話に花が咲いた。聞くところによると今では愛息のサッカーチームでボランティアコーチなどをやっているらしい。立ち位置は違えどずっとサッカーに関わっていく…昔から言っていることを実践している教え子の姿に、強風のストレスもどこかへ行ってしまった。
前半キックオフ。風上、追い風であってもサッカー経験値の高い選手が揃う椙山に決定機を作り出せない。逆に丁寧につながれボールをもてない時間が続く。しかし取り組んできたチーム戦術を見事に実践し、突破を許さなかった。前半を終えスコアレス。恐らくこの時点でグランドにいた観客の大半は驚いていただろう。驚かずにいたのはアンガクベンチだけかもしれない。
ハーフタイムでポジショニングの若干の修正と風下での留意点だけ伝え、後半へ。当然のように常に椙山の攻撃にさらされることになったが、組織が崩れることはなかった。個で劣ることを自覚した上で取り組んだ組織。またもやピタリとハマった。被シュート14本(うち、枠内7本)で無失点はグループ戦術を全うした部員全員と集中を切らさなかったGKアダマを褒めた方が良いだろう。
しかし勝負は非情なものだ。PK戦で負けてしまった。強豪校と勝ち点を分け合うも勝ちきれなかったことは残念。しかし場にマッチした正しい戦術とそれをやり切るだけの力があれば、戦えないわけではないということも証明できた。一人少ない10人でこの結果…ちょっとだけ自信をもってもいいよと部員に伝えた。

第2戦は2月2日、市邨高校との対戦。率いる同年代(?)の林先生とはいつも指導論、戦術論を勉強し合う仲である。献身的で野心的。心から尊敬しているがそれをちっとも判ろうとしないナイスガイである。そんな先生が指導するチームだからこそ絶対に負けられない。
キックオフからシーソーゲーム。ちなみに安城学園10人対市邨9人。メイクしなくてもスペースが出来る(苦笑)という違和感を感じながら戦況を見る。
前半は0-0。ざっくり言うと…身体能力を生かしてフレキシブルに動く市邨に対し、安定的なリアクションで落ち着いて対応する安城学園、という構図。安城学園はもちろん、恐らく市邨もここまでプラン通り。試合が動いたのは後半16分。少し前掛かりになったところから驚くほどあっさり突破を許し、GKと1対1、すんなりゴールを許してしまった。

0-1。直後からポジションを変え、反撃に出る。が、攻める意識はあるものの、ここ数試合の攻撃に関するイメージが脳裏にこびりついてしまっていて、それを封じられた途端、思考が止まり、手を打てなくなった。明らかな戦術プランのミスである。恥ずべきは顧問の指導ミスだ。部員たちは全力で戦うもネットを揺らせない。そのまま試合終了。まだ一試合残した状況であるにもかかわらず、決勝トーナメント進出の可能性が消えてしまった。新チームになり約2か月。人数的にも能力的にも難しいのは誰よりも部員自身がよく理解していた。しかしそれでも部員全員が新人戦での充実を目指してトレーニングを続けた。だからこそ…悔しさが募る。
終了後、涙する部員もいたし、ぐっとこらえて次を見据える部員もいた。どちらの心も痛いほど理解できる。ただ忘れてはならないのはすぐ翌日にもう一試合残している、ということ。心と体がこの状態で…トレーニングする時間もなくて…どこまで立て直せるか。新チームの試金石になる試合まで…残り24時間。

第3戦、南山+高蔵寺合同。率いるはこれまた苦楽を共にした南山梅垣先生。実は今年度の主要3大会(総体、選手権、新人戦)のすべてで対戦することになった。まさにバーターである(笑)がそんなことは言っていられない。準備時間が決定的に足りない中だったが前日とは打って変わって攻撃的に展開する。ポジションと戦術を手直しし、久しぶりにポゼッションサッカーを展開。前半、幸先よくゴールが決まる。決めたのは千陽。自身、久しぶりのゴールになったが驚きは約50mの超ロングシュートだったこと。本人いわく狙ったシュートだった!とのことだが、果たして…(笑)。しかし、とにかく欲しかった先制点が手に入る。後半に入り、凡ミスが出て失点、1-1。その後、相変わらずセカンドボールは支配するものの時間の経過とともに決定的なシーンは減ってきた。そんな中、久しぶりにFW起用した加奈がキレのあるドリブル突破、ペナルティーエリア内でファウルを受ける。PK。大事な場面での重責を瑛梨奈が決めきった。2-1。これで決まったかな、と思った矢先、凡ミスその2。悔やんでも悔やみきれない形での失点。2-2。試合はその後、PK戦に突入。千陽、歩美、フタカナが練習通りにきっちり決めて、最終戦を勝利することが出来た。
課題もあり収穫もあった。しかし最も強調すべきは前日からわずかな時間のミーティングだけで戦い方を変更できた、ということ。引退した先輩たちを彷彿とさせるようなポゼッションも披露してくれた。



椙山をあそこまで追い詰めたことは素直に評価してあげたい。市邨とは硬直した戦いしかできなかったことが残念。そして、時間のない中で自分たちを信じきった南山との試合。良いところばかりではなかったが、それでも“戦術と心を立て直す”という意味においては及第点だと思う。
予選リーグ敗退という結果に終わった新人戦だが、このチームはまだまだ続く。何よりもの救いは、部員全員が上手くなる意欲を失っていない、ということ。大丈夫、あの先輩たちですら“最初から強かった”わけではない。“時間をかけて強くなった”のだから。
また、頑張ろう、と思う。