2012年11月

舞台を目指す、ということ。

入れ替わり立ち代わり、引退した3年生が新チームを見に来てくれる。どうやら檄を飛ばそうと思って来たものの、上達したい一心で走り込みをする後輩を見て「頑張ってるねぇ…」とつい口にし、目を細める。そんな3年生と軽口を飛ばしあう。そんな毎日を、今は過ごしている。
しかしどうしても一つだけやり残したままでは前に進めない、と考えていることがあった。11月17日18日実施の全日本高等学校女子サッカー選手権東海大会。ここを目指したチーム作りだったからこそやはり見ておく必要があるのではないか。新チームのためでもあるし、何より私自身が目指す山の高さをもう一度認識しないといけない。そして愛知県の仲間が戦う姿を近くで見るだけで得られる何かが必ずある。そう思い、その日はトレーニングを午前の短時間で切り上げ、大雨の中、静岡へ。

試合会場が二つに分かれての同時刻開催。やはり常葉グリーンフィールドは外せない。まず聖カピタニオ対三重。視線はもちろん、目の前で展開されている試合内容を追いかけている。三重先制。不思議と感情はピクリとも動かない。頭の中で、この試合に至るさまざまな道程に思いを馳せる。少し近づけたと思ったら、それ以上に離されてしまう多田カピタとの距離感。離されたと体感した瞬間に絶望を感じ、でも大体その24時間後に、次こそは!という野心にも似た決意や覚悟のような感情が芽生える。そんな“いつものこと”を思い出していると、視線の先で試合が動く。カピタが追いつき、そして逆転。こうして見て考えていると、追いつくための方法論がいくつか頭に浮かび、そして淘汰されていく。これが学ぶということなのか。試合はそのまま進み、2-1でカピタ勝利。まだ翌日の準決と決勝・3決まで順位は分からないが、この時点で東海代表として全国切符を決めた。カピタの選手があんなふうに喜ぶのを見るのは、たぶん初めてだ。



雨が強まる中、常葉橘対旭丘、キックオフ。県大会でもう少し勝ち進めばここに自分たちがいれたのに…。そういう口惜しさを忘れてはいけない。いつも通り、東海大会を経験する旭丘と、いまだ東海大会を経験したことのない安城学園。この差をどう埋めればいいのか…。
朝からの大雨に拍車がかかり、素晴らしい人工芝ピッチもさすがに水溜りがみるみる増えてきた。そんな中でも常葉橘の、目の前の現象に対し瞬間的に対応する個々のアイデアと、それを具現化するための個人技術、個人戦術、グループ戦術。そしてそれを70分やり続ける体力。なんというか…ガツンと頭を殴られたような衝撃。旭丘も練りに練られたチーム戦術で対抗する。その野心溢れる姿に、これまた心揺さぶられた。苦しい展開でも全てを受け止める中西先生の采配を見ると、まだまだ追いつくのは難しい…とさえ思わされる。

この東海大会視察は2年生数人にも同行してもらった。“男気じゃんけん”で勝った者が嬉しそう(!)に助手席に座り、残りの人は残念そう(?)に後部座席へ。往復約4時間半。サッカーについて、サッカー部について、じっくりと話し込んだ。冗談を飛ばしたり真剣に意見したり。話すのは嫌いじゃないが、この学年の部員ととここまでの長時間、話したことはなかったように思う。東海大会のピッチ上から学んだことはとても多い。でもこの移動時間もそれと同じくらい、意味のあるものになったと思う。学校の先生として、サッカーの指導者として、考えていることを伝えるのは本当にエネルギーがいる。伝え方にも工夫がいる。でも良いチームを作り出すにはこれくらい苦労する方がちょうど良い。そう思わせてくれる4時間半だった。

さて、チーム事情はというと…ハードワークのせいか、程度はまちまちだが傷んでいる部員が増えてきた。しかしリハビリ組含め、部員のモチベーションは低くない。TMが雨で流れてしまったのは残念だがトレーニングで補えることもたくさんある。日々のトレーニングで起きる“目の前の現象を大切に”しながら、“東海大会に行くという目標”を常に忘れず、高みを目指したい。