2012年1月
OG会。
年が明け、早いもので一か月が過ぎようとしている。2012年、今年は安城学園高校にとって創立100周年という節目の年になる。そんな年に我が女子サッカー部はどう成長し、どう世の中と関わっていけるか。例年以上に期待感は大きい。
新年早々、初のOG会を行うことができた。参加OGは3期生と4期生、そしてまだ現役高校生である6期生からそれぞれ2人ずつ。実はもっと大勢のOGから参加したいという声は上がっていたのだが社会人ゆえ仕事始めの日と重なってしまったそうだ。とはいえ懐かしい面々と一緒にボールを蹴る時間というのは本当に嬉しいひと時だった。創部して以来、「部員数を増やして紅白戦を実施できるようにしたい」「OG組織を作り、年に1度は盛大にOG会を催したい」というのが密かな願いなのだが、やっとそのうちの一つが叶った1日となった。
終わった後はOG数人と“いつもの”ガストへ。仕事の話、資格の話、恋の話…。テーブルの上には空いた皿でいっぱいになるほど、これもまた楽しい時間であった。「またみんなで集まりましょう!」
新人戦予選リーグC組。
1月14日。予選リーグC組は顧問会議で「死のリーグだな」と言われたグループ。同一リーグすべてが1部所属。初戦は春日井商業。キックオフから徐々にペースをつかんだが、なかなかゴールが奪えない。万全のコンディションではなかった攻撃の主力を外していたため、無理もないかな、と考えていたが前半終了間際の29分、自分たちのCKから逆にスペースを突かれ失点。相手の速攻を許してしまった。もったいない時間帯での失点だったが、ただし切り替えやすいタイミングではある。後半も全く気落ちせず、いつも通りボールを大切にするサッカーを展開。チャンスは巡り、後半15分過ぎ、右サイド深いところからニアサイドに放り込む。相手GKと交錯してそのままファーサイドにボールは動き、狙い通りとばかりに飛び込んでシュート!よし、同点だ!と思った矢先、主審がアシスタントレフリーに確認に行く。…まさか、と思ったら案の定、オフサイドの判定。どちらとも取れるシーンではあったが運もなかったかもしれない。そしてそのまま試合終了。初戦を0-1で落とすという、この激戦のリーグでは一敗以上に痛い黒星スタートとなってしまった。
21日、対旭丘高校。これまで勝利したことのない相手。だからこそ今回は、との思いが強い。前日からの強い雨で難しいグランドコンディション。片隅には整備に使われ地面の雨水を吸い込み続けたであろうスポンジとバケツが置いてあった。中西先生と旭丘部員の心遣いに感謝したい。とはいえ物理的に限界のある作業。時間の経過とともに荒れたコンディションになってしまった。しかしそれを超えた集中力で見事な戦いを展開する両校。前半はオープニングシュートをポストに当てられあわや、ということもあったがそれ以降は決定的なシーンを作らせず、またこちらも相手を崩すほどの決定機は作れず0-0。押しつ押されつ…緊張感に満ちた、まさにシーソーゲームであった。
後半に入り、徐々にペースが試合巧者の旭丘に傾く。安学は守備に割く時間が増え効果的なポゼッションができなくなる。このあたりが地力の差なのか。試合が動いたのは後半11分。それまで旭丘攻撃陣にほとんど前を向いてプレーをさせていなかったのだがミドルレンジで瞬間的にスペースを与えてしまった。それを見逃す旭丘ではない。一瞬のすきを突かれミドルシュート。必死でカバーに入ったCBの足に当たり、不運にもコースが変わってしまった。0-1。
前半に足を痛めた春奈が後半になると動きが鈍り始めてきた。それでも痛みをこらえ必死で食らいつく。シュート性の鋭いキックにも無我夢中だったのだろう、顔から飛び込んでコースを防ぐ。チームメイトが「春奈サンキュー!!」と口々に叫ぶ。しかしその時に出血し、一旦ピッチから退くことになった。
10人対11人の状況。一刻も早く交代メンバーを入れて対応しなければ。しかし、センターラインで交代を待っている間もペナルティーエリア近くで攻め込まれる時間が続く。早くプレーを切ってほしい…思いは届かず非情にも追加点を奪われてしまった。0-2。
それにしても不思議なものだ。2点取られて直後から中盤でボールが回せるようになる。旭丘が手を緩めたのか、それともアンガクが開き直ったのか。ともかく、今のチームカラーである“ボールを動かす”サッカーが出来てきた。おのずと、シュートチャンスも巡ってくる。一点取ればまだ試合は動かせる。そう信じるアンガクは攻め込む、がココというところでミスが響き、ゴールはとうとう奪えなかった。ホイッスル、試合終了。
今大会、チームにある変化があった。厳密に言うと少し前からチーム内にあったことなのだが、真剣勝負の中で明確化、顕在化した。それは本当の意味で『自分のために、仲間のためにプレーする』姿勢である。もう少し丁寧に言うと『自身の役割を全うし、その上で仲間を本当に信じる』ことが出来るようになってきた。語弊のないようにしたいのだが、無論いままでもやっていなかったわけではない。ただ、個々が局面ごとに頑張ってはいてもチーム、あるいはグループとして終始頑張れていたかといえば、実はそうではなかった試合、時間帯もあった。しかし今回は明らかに違う。例えば春商戦、旭丘戦のハーフタイム。ベンチに戻りながら、あるいはベンチに戻ってきても仲間を尊重しつつ、より良いプレーを一緒に目指そうとする意見交流ができていた。また、試合翌日のサッカーノートには誰のノートにも仲間の頑張りを認め、仲間に感謝する言葉が書き連ねてあった。2試合終えて、決勝トーナメント進出は無理な立場になったが、『この大会を通してもっと成長したい』(部員ノートより)という部員たちを信じないわけにはいかない。
28日、対松蔭高校。前回の高校選手権でも同一リーグで対戦。その時には何とか勝利することが出来たが当然一筋縄ではいかない相手である。また今大会においてこの時点で松蔭はCリーグ首位であり苦戦は必至であった。しかし先制点はアンガク。得意のポゼッションから攻めに転じ、中央からミドルシュート。世梨の独断場である。ゴール左上に吸い込まれるボールの軌道を見てチーム全体が活気づく。しかしその直後、自ら試合を難しくしてしまった。久しぶりの得点に浮足立ってしまったのか自分たちのスタイルを見失ってしまった。ここは私自身、ベンチワークとして大いに反省すべきところだ。セーフティーにプレーしているつもりがこぼれ球をことごとく拾われ守備一辺倒に。得点直後に連続失点し、1-2で前半終了。
後半に入り、松蔭の攻撃は激しさを増す。前半は何とか対応していた部分も少しずつほころんできた。けがを抱えている者や数日前からコンディション不調を訴えていた選手の動きが明らかに前半より落ちている。結局、1-5で試合を終えることとなってしまった。
松蔭戦後、ある部員のノートにこう書いてあった。『私は今大会のこれまでの試合と同じように勝負を全然諦めていなかった。ただ、後半、あれだけ攻められて、守備の時間がずっと続いて、どうしたらいいのかわからなくなった』。つまり彼女は“目の前に起きている現象”と目一杯闘っていて、なおかつ“状況を打開するアイデア”を考え続けていた、ということになる。私がどんな答えを彼女にしたかは内緒だが、こういう部員は経験を次に活かせる人間に成長すると私は思う。
また、別の部員は『これまでの自分自身の甘さを痛感した大会だった。自分に厳しい人になりたい』。周囲を認め自己反省をする。これも人間的な成長をするうえで欠かすことのできない道程だと思う。
負けは悔しい。予選リーグ敗退は尚更のことだ。しかし得たものもある。収穫はこっそりと胸に秘め、毎日を大切に過ごしていこう。